今回で3回目となるRed Hatのオープンソース利用動向調査「The State of Enterprise Open Source 2021」が3月3日に公開された。ユーザー企業におけるオープンソース・ソフトウェアの利用状況を調査したもので、今回は世界1250人のITリーダーから回答を得た。ここでは過去2回のレポートも参照しつつ、ハイライトをまとめてみよう。
最初に、注目される調査結果を列記してみる。
・回答者の90%がオープンソースを利用中
・利用目的のトップは、「ITインフラのモダナイゼーション」
・利用メリットのトップは「品質の高さ」、3位に「良好なセキュリティ」
・「TCO削減」は6位に後退(2年前は利用メリットのトップ)
・利用する際の障害は、「サポートのレベル」がトップ
以上から、やや強引な「まとめ」をすると、オープンソースはこの2年間に企業の変革・イノベーションを支える技術として広く認識されるようになった、と言えそうである。
以下、ハイライトを紹介していこう。
利用目的のトップ3は、以下の順(%は回答率)。
1位 ITインフラ・モダナイゼーション 64%
2位 アプリケーション開発 54%
3位 DX(デジタル・トランスフォーメーション)53%
この上位3つは、2年前(2019版レポート)と比べて、それぞれ11ポイントアップしている。
このことと、利用メリットの上位に、「品質の高さ」(35%)、「最新イノベーションへのアクセス」(33%)、「良好なセキュリティ」(30%)がランクされ、一方、2019年にトップだった「TCO削減」が6位に後退したことを見ると、オープンソース・ソフトウェアは「安さ」よりも「機能」「品質」で評価され、変革・革新のためのツールとして広く活用され始めている、と言えるだろう。
ただし、課題もある。オープンソースを利用する際の障害となる「サポートのレベル」「互換性」「コードの安全性」「社内のスキル不足」は、過去3回の調査でほとんど変わらず、今回も高い比率である。以下のような状況だ(比率は過去3回の調査。2019年→2020年→2021年の順)
・サポートのレベル 35%→37%→42%
・互換性 35%→34%→38%
・コードの安全性 38%→38%→35%
・社内のスキル不足 不明→33%→35%
この30%~40%超という結果は、けっして小さくない。Red Hatの調査では、オープンソースを利用した人・企業がこれらの課題・懸念事項にどのように対応したか(対応しているか)不明だが、注目すべき点である。
利用の際の課題・懸念事項について2021年調査は、次のように述べている。
「これらの懸念は、エンタープライズ版のオープンソース(ベンダー提供のオープンソース)よりも、コミュニティ版のオープンソースについて言えること。この2つはしばしば混同されるが、動きの速い技術分野でよく聞かれる懸念や不満でもある。これらの課題が示すのは、(課題解決のための)ソフトウェアのサプライチェーンを築くこと、信頼できるテクノロジー・パートナーをもつこと、社員のスキルを常に最新に保つことの重要性だ」
このほか今回の調査では、コンテナとKubernetesの重要性が高まり、すでに半数近く(47%)がコンテナを利用中で、30%がコンテナの利用を拡大するという回答も出ている。
オープンソースがどのように適用を拡大し、課題を解消していくか、2021年も目を離せないテーマである。
・調査結果のインフォグラフ http://red.ht/3bBe5jA
・2021年版レポート The State of Enterprise Open Source 2021
・2020年版レポート The State of Enterprise Open Source 2020
・2019年版レポート The State of Enterprise Open Source 2019
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